エヴァ完結編『シン・エヴァンゲリオン劇場版』
25年続いたエヴァシリーズも遂に完結です。
TVアニメ版・旧劇場版・漫画版の設定を活かしつつ、新劇場版としての新たな解釈を加えてリブートされた本作。
新劇場版だけでも14年かけて作り上げた作品だけあって、最後は全てのエヴァンゲリオンに決着をつけた終わり方となっていました。
ただ、最後のエヴァ作品というだけあって難解なところや新たな解釈が生まれたところもいくつかありましたね。
今回は『シンエヴァ』に関する考察を改めてまとめていきたいと思います。
シンエヴァ考察の前に知っておきたい伏線たち
アスカの日本姓が「惣流」から「式波」に変更

アスカは旧作であるTVアニメシリーズから登場しているメインキャラの一人です。
ただ、新劇場版が始まったタイミングで、旧作では「惣流(そうりゅう)」だったアスカの日本姓が「式波(しきなみ)」に変更になっています。
渚カヲルの正体は第1使徒

カヲルもアスカと同じく旧作から登場するメインキャラの一人ですが、その正体は第一使徒です。
第一使徒アダムの魂に人型の器が与えられた存在で、ゼーレによって生み出されたと考えられています。
新劇場版から登場した真希波マリ

新劇場版からの新規キャラとして、真希波・マリ・イラストリアスが登場しました。
目的や正体は一切不明ですが、ゼーレやゲンドウたちがやろうとしていることもある程度は分かっている様子。
ちなみに、エヴァに登場する女性パイロット綾波・式波・真希波の3人の名前は日本の戦艦名から名付けられています。
人類補完計画と4つのインパクト

碇ゲンドウとその裏にいる組織ゼーレは人類が滅びの道から生き残るために「人類補完計画」の実現を目指していました。
そして、その実現のために必要な儀式としてサード・インパクトとフォース・インパクトを起こしています。
ちなみに、新劇場版『Q』までの間に起きているインパクトは全部で4つです。
- 人類が生まれるきっかけとなったジャイアント・インパクト(これが後にファースト・インパクトと呼ばれるように)
- 新劇場版『序』の14年前に起きたセカンド・インパクト(第1使徒アダムと人との接触によって発生)
- 新劇場版『破』~『Q』の間に起きたサード・インパクト(きっかけはシンジが『破』で起こしたニア・サードインパクト)
- 新劇場版『Q』で起きたフォース・インパクト(きっかけはシンジですが、実際にトリガーとなったのは渚カヲル)
①と②は新劇場版では詳しく説明されていないので、旧作の設定がそのままであればという前提です。
シンエヴァの物語を徹底考察!

それでは、『シンエヴァ』の考察です。
完結編というだけあって上映時間は驚異の2時間35分という長編作品となっていた『シンエヴァ』ですが、考察ポイントはいくつかに絞られると思います。
ネット上で話題になったり、個人的に気になっていたポイントは次の6点です。
- ゲンドウが行った「アディショナル・インパクト」とは?
- 結局ゲンドウは目的を達成できたの?
- 式波アスカはクローンだった?
- 渚カヲルの「渚司令」ってなに?
- 真希波マリの正体とマリエンドの意味は?
- エヴァはループしていた世界だった?
アディショナル・インパクトとは?

ゲンドウ率いるNERVとミサト率いるWILLEの最終決戦。
ミサトたちはフォース・インパクトの再発を防ぐためNERV本部への強襲作戦「ヤマト作戦」を決行していましたが、そこで展開されていた儀式を目にして「何やらゲンドウがフォースとは違うことをしようとしている?」ということに気づきました。
それをミサトたちは「アナザー・インパクト」、ゲンドウは「アディショナル・インパクト」と呼んでいます。
視聴者もてっきりゲンドウはフォース・インパクトを起こそうとしていると思っていましたから、突然の「もう一つのインパクト」の登場に度肝を抜かれること必至です。
では、ゲンドウがやろうとしていた「アディショナル・インパクト」とは何なのか、まずはこのもう一つのインパクトを紐解いていきたいと思います。
ユイと再会するための儀式?

ゲンドウの説明によると、アディショナル・インパクトを起こそうとした理由は「ユイに再会するため」でした。
今回の『シンエヴァ』では人類補完計画の全容が語られていましたが、その内容は海・大地・魂を浄化して、すべての人類を「個」としてではなく「全」としての生命体に進化させるというものでした。
しかし、ユイは既にこの世から姿を消しているわけですから、魂を浄化して一つになる前にゲンドウはユイを見つけておく必要がありました。
なので、ゼーレが進める人類補完計画のステップに「ユイと会う」という超個人的なステップを付け加えて、人類補完計画後の「争いも差別もない世界」をユイと一緒に過ごすというのがゲンドウの狙いです。
虚構世界のユイを現実世界に具現化したかった?

ただ、その「ユイと会う」ためにゲンドウがしようとしていたことがちょっと複雑で分かりにくかったですよね。
ゲンドウは「虚構世界と現実世界の融合」を目指していたようですが、虚構世界がそもそも何なのかが気になるところです。
この辺りはゲンドウとシンジが戦っていた場所「マイナス宇宙」と「ゴルゴダオブジェクト」も関係していそうでしたね!
二人の会話から現実世界との関係図を作ってみるとこんな感じでしょうか?

この図をもとにゲンドウの行動を追ってみましょう。
まず、ゲンドウはアディショナル・インパクトを起こすために、ガフの扉を通って「マイナス宇宙」に到達し、さらにマイナス宇宙内にある「ゴルゴダオブジェクト」を目指していました。
ゲンドウによると「人はマイナス宇宙を知覚することができない」そうですが、ゴルゴダオブジェクト内ではシンジとゲンドウの戦っている場所が「第三新東京市」や「ミサトの部屋」、「中学校の教室」として”知覚”できていましたね。

ゲンドウは、これが起きる理由として「(LCLが)自分の記憶や意識にあるイメージを脳に知覚させている」というようなことも言っています。
そして、最終的にはゴルゴダオブジェクトの中にある「現実には存在しない虚構のエヴァ」(ゲンドウは「エヴァンゲリオンイマジナリー」と呼んでいましたね!)にたどり着き、これを使ってアディショナル・インパクトを発動!
その結果、エヴァンゲリオンイマジナリーは、シンジたちが元いた「現実世界」にも実体として姿を現していました。
つまり、これをユイでもやりたかったということなのかもしれません。
なので、このことから分かる「アディショナル・インパクト」とは、
- 虚構世界の中で自分の記憶や意識の中にいる「ユイのイメージ」を知覚する
- 知覚したイメージを現実世界に投影し「実体」として存在させる
だったと考えることができそうです!
結局ゲンドウは目的を達成できた?

ただ、計画通りアディショナル・インパクトを起こしたゲンドウでしたが、その後のシンジとの対話シーンではあまり「計画通り」な雰囲気はありませんでしたね。
それどころか、せっかくインパクトを起こしたのにユイがどこにも見つからないと嘆いてさえいました。
最終的にはユイと出会えたような描写もありましたが、「電車を降りた」姿を見るとアディショナル・インパクト自体は途中で諦めていたようにも思えます。
結局ゲンドウは自分の目的を達成できたのでしょうか?
ゲンドウはユイと出会うことができた?

まずは、ゲンドウがアディショナル・インパクトの中でユイと出会うまでを追いかけてみましょう。
先ほどのセリフにもあるように、ゲンドウは自分の中にユイを見つけることができずにいました。ゲンドウの目的は「ユイと会うこと」でしたから、これが達成できなければゲンドウの計画は失敗したも同然です。
ただ、ゲンドウは確かにユイの記憶を持っていたはずですし、これだけ一途に思っていたわけですから意識の中にもしっかり刻まれているはずですよね。
ゲンドウ自身は「自分が弱いから」ユイが姿を見せてくれないと考えていたようですが、少年姿のシンジにそれは違うと否定されています。
このセリフを受けたゲンドウは、今まで距離を取っていたシンジに謝り、最後には優しく抱きしめていましたね。
そして、その直後にゲンドウはユイを見つけることができたようです。
ですが、この直後にゲンドウはインパクトを中断しています。
この一連のシーンから分かるのは、ゲンドウは自分の弱さと向き合った結果、アディショナル・インパクトを続ける意味を見出せなくなったということかと思います。
ゲンドウの弱さとは?

では、ゲンドウの弱さとは何だったのでしょうか?
これを紐解くカギは、ゲンドウの過去回想とそこで語られたシンジへの想いに隠されている気がします。この時のゲンドウのセリフをまとめるとこんな感じですね!
- 若い頃のゲンドウは世界から孤立し自分の世界に引きこもっていた
- ユイと出会うことで他人と関わる喜びを感じることができた
- ユイを失ったことで初めて「孤独の怖さ」を実感した
- シンジの存在が自分を苦しめていた(父親でいることが自分にとっての罰に感じられた=シンジを見るとユイを失ったことを実感してしまう?)
- シンジと関わらないことが、シンジにとっても幸せだと考えていた
このシーンからは、ゲンドウがユイを失ったことを受け入れられず、その結果ユイとの子供であるシンジでさえも遠ざけてしまっていたことが分かります。
つまり、ゲンドウの弱さとは「ユイがいない現実と向き合ってこなかった」ところにあると考えることができそうです。
そして、その弱さと向き合ったということは、ゲンドウは「ユイがいない現実を受け入れた」ということになりますね。
アディショナル・インパクトとは違う答えを見つけたゲンドウ

ゲンドウが「ユイのいない現実」を受け入れたのであれば、アディショナル・インパクトを途中でやめたのにも説明がつく気がします。
なぜなら、アディショナル・インパクトは「虚構世界と現実世界の融合」を目指したものだからです。ゲンドウはユイがいない現実を受け入れらなかったからこそ、虚構世界のユイを現実世界で実体化させようと今回の計画を実行していました。
そう考えると、ユイのいない現実を受け入れたということは、アディショナル・インパクトを起こす動機を失ったということになります。それなら、ゲンドウが「途中下車」という選択をするのもとても自然な流れに思えますね。
とはいえ、ゲンドウは「自分の目的を諦めた」わけではないと個人的には思います。どちらかというと「アディショナル・インパクトとは違う答えを見つけた」という方が正しい気がしますね!
ゲンドウは現実を受け入れたことで、「ユイと再会すること」と「シンジとの関係を修復すること」の2つの答えを見出すことができました。
そして、最後のシーンではユイと一緒にシンジを新世界に見送っていましたから、最終的にはゲンドウも救われた結末だったように思います。
式波アスカはクローンだった?

また、今回の『シンエヴァ』では式波アスカがクローンだったことを匂わせるシーンもありましたね!
それが、ミサト率いるWILLEクルーたちがNERV本部に猛攻撃をしかけていたシーンです。
標的は覚醒したエヴァ第13号機。
第13号機が再起動するとインパクトのトリガーとなる可能性が高いため、その前に「強制停止プラグ」を差し込む任務を担っていたのが式波・アスカ・ラングレーでした。
ですが、アスカはこの時第13号機の中に眠る自分そっくりの「何か」に接触され、第13号機の中に取り込まれてしまいます。
その「何か」と邂逅した時のアスカのセリフがこちら。
このセリフから分かるのは、アスカにはオリジナルがいるということですね。
そして、オリジナルがいるということは、アスカはクローンである可能性が高そうです!
シキナミタイプとは?

かつてアスカはアヤナミレイ(仮称)のことを「アヤナミタイプの初期ロッド」と呼んでいました。
アヤナミレイ(仮称)は碇ユイの遺伝子を基に作られたクローンであることが新劇場版『Q』で判明していましたので、シキナミタイプも同じく誰かの遺伝子を基にしたクローンと考えるのが自然ですね。
また、『シンエヴァ』では、アヤナミタイプもシキナミタイプも「エヴァ第13号機を動かすために作られた存在」であることがゲンドウによって明かされています。
つまり、ゲンドウたちが人類補完計画(またはアディショナル・インパクト)を達成するために人工的に作り出したのがアヤナミタイプであり、シキナミタイプだったことになりますね!
式波アスカのオリジナルは誰?
式波アスカがクローンだとすると、「オリジナルは誰か」「いつからクローンだったのか」ということも気になります。
この辺りは別記事でも詳しく考察していますので、よかったらこちらもどうぞ!

「渚司令」の意味とは?

ゲンドウが計画の遂行を中断した後、ゲンドウの起こしたアディショナル・インパクトはシンジが引き継ぐことになりました。
そして、マイナス宇宙の案内人としての役割もゲンドウから渚カヲルにバトンタッチしています。
このシーンではシンジとカヲル、そしてカヲルと加持リョウジの会話が展開されますが、渚カヲルがこれまでとは違う呼び名で呼ばれていたのが印象的でした。
今回初めて出てきた「渚司令」という呼び名。
この呼び名には一体どんな意味が込められているのでしょうか?
渚司令=碇司令?

「司令」と聞いて真っ先に浮かび上がるのは碇ゲンドウですよね。
NERVの最高責任者として、部下からは「碇司令」と呼ばれていました。今のところ、エヴァには他に司令と呼ばれている人物や役職はありませんので、この二人の接点から渚司令の謎を紐解いていきたいと思います。
ちなみに私は、渚カヲルが「シンジを幸せにしたいと願うゲンドウの純粋な気持ちだけが具現化した存在」として描かれていたのではないかと考えています。
意外と共通点の多い渚カヲルとゲンドウ

そう考えられる理由として、渚カヲルとゲンドウは意外と共通点が多いということが挙げられます。先ほどのセリフでシンジも「カヲル君は父さんと似ているんだ」と言っているくらいですからね。
そして、今回の『シンエヴァ』で描かれていた二人の共通点は大きく二つあると思います。
- シンジへの気持ちとすれ違い
- ピアノ
まず、「シンジへの気持ちとすれ違い」ですが、ゲンドウは過去回想で自分が遠ざかることがシンジにとっての幸せと思いこんでいたことを明かしていました。そして、それが原因で碇親子はすれ違いの連続でした。
つまり、息子を幸せにしたい気持ちはあったけど、シンジの望む幸せを与えることができていなかったということになります。
これは、渚カヲルも同じことが言えそうです。
渚カヲルはゲンドウよりもストレートにシンジの幸せを願い続けていましたが、今回の会話で、それもシンジの望む幸せではなかったことに気付きました。
加持リョウジからも「あなたはシンジ君を幸せにしたかったんじゃない、それによりあなたが幸せになりたかったんだ」と指摘されている通り、渚カヲルは自分の思う幸せの形をシンジに押し付けてしまっていたんだと思います。
渚カヲルとゲンドウ、二人ともタイプは全然違いますが、シンジと気持ちがすれ違っていたという点では非常に似ている存在ですね!
そして、もう一つの共通点がピアノです。

こちらもゲンドウの過去回想で明らかになったことですが、孤独だったころのゲンドウの心を満たしていたのが知識とピアノということでした。
ピアノで思い出すのは、新劇場版『Q』での渚カヲルとシンジによるピアノの連弾です。
この連弾を通じて、二人は距離を縮めていきましたし、シンジは再びエヴァに乗る気力を取り戻していきました。もしかすると『Q』のこのシーンが碇親子のあり得たはずの姿として描かれていたのかもしれません。
こうやって比較してみると、やはり渚カヲルとゲンドウは共通点が多いですね。
ただ、二人ともシンジへの態度は正反対です。
シンジと極端に距離を取るゲンドウと、シンジとの距離を極端に縮める渚カヲル。これは、ゲンドウの「シンジと距離を取りたい」という気持ちと「シンジを幸せにしたい」という気持ちの対比を描くために、後者を具現化した存在として渚カヲルを描いていたんじゃないかと感じています。
エンディングの渚カヲルと綾波レイ

また、『シンエヴァ』のエンディングでは、渚カヲルと綾波レイのカップリングが急に出てきて視聴者に衝撃を与えていましたね。
ただ、これも渚カヲルがゲンドウの気持ちを具現化した存在として描かれていたと考えればある意味自然な描写だったようにも思います。
このエンディングの描写も含めて、別記事では「渚司令の謎」をもう少し深掘りしています!

真希波マリの正体とマリエンドの意味は?

そして、『シンエヴァ』で一番注目された存在といえば真希波・マリ・イラストリアスではないでしょうか。
今まで謎だった彼女の正体が明かされただけでなく、物語のエンディングにも深く関わってくる存在だったなんて誰も予想できなかったはずです…!
それでは、まず彼女の正体から追ってみましょう。
劇中で彼女の正体が明かされたのはNERVの副司令・冬月コウゾウとの会話からでした。「お久しぶりですね。冬月先生」と呼び掛けるマリの様子から見るに、マリは冬月のかつての教え子だったことが分かります。
また、ゲンドウの過去回想シーンでは、学生だったゲンドウに冬月とユイを紹介しているマリの姿も確認できました。
つまり、真希波マリはゲンドウとユイの学生時代の友人で、冬月が3人の指導教員だったというわけです!
真希波マリは「イスカリオテのマリア」と呼ばれていた?

そして、マリと冬月の会話シーンでは、マリがかつて不思議な呼び名で呼ばれていたことも判明しました。
ただのあだ名じゃなさそうですね。
この「イスカリオテのマリア」に込められた意味とは何だったのでしょうか?
「イスカリオテのマリア」の元ネタは裏切者のユダ?

調べてみたところ「イスカリオテのマリア」の元ネタは聖書にありそうです。
イエス=キリストを裏切ったとされる弟子のひとり「ユダ」の正式名称が「イスカリオテのユダ」ということなので、恐らくここから持ってきているのは間違いないでしょう。
では、真希波マリは裏切者だったんでしょうか?
これに関して、実は最近の研究で「ユダは本当は誰よりも真理に近かった存在で、裏切りもイエスの指示によるものだった」とする説が囁かれるようになっているようです。
このユダの新解釈と照らしてマリの正体を探ってみると、物語におけるマリの意外な立ち位置が見えてきました。
そして、それがマリエンドにつながる重要な伏線にもなっていそうです。
この辺は別記事で詳しく考察しています!

エヴァはループ世界だった?

最後に、『シンエヴァ』だけでなくエヴァ世界全体に関する考察をしていきます。
これまでもエヴァはループ世界なのでは?という考察が密かに行われていましたが、今回の『シンエヴァ』でそれがほぼ確定したのではないかと感じています。
そう考える根拠として一番大きいのが渚カヲルの存在です。
渚カヲルは過去の世界の記憶を持っている?
渚カヲルは新劇場版『序』『破』『Q』のすべてに登場していますが、登場シーンのすべてにおいてかなり意味深なセリフを残しています。
中には、渚カヲルがループ世界を繰り返し経験していて過去の世界の記憶を全て持っていると匂わせるようなセリフも。
まず、新劇場版『序』で初めて登場した時のセリフです。
この時、渚カヲルとシンジはまだ出会っていません。
月面の棺から目覚めた渚カヲルが地球上にいるシンジに語り掛けたシーンでした。
ちなみに、3番目というのはシンジが第3の少年(3番目のエヴァパイロット)であることを指しています。シンジは旧作であるTVアニメシリーズの時も「第3の少年」でした。
続いて、新劇場版『破』で登場した時のセリフです。
これは渚カヲルが初めて地球上に降り立ったシーンです。
サード・インパクトのトリガーとなってしまったシンジを助けた時の一言ですが、「今度こそ」というセリフに含みがありますね。
まるで、「これまで何度も挑んでは失敗してきた」とも受け取れるような言い方です。
確かに、旧作のTVアニメシリーズ、旧劇場版の時もシンジは決して幸せとはいえない結末を迎えていました。このセリフはその時のことを思っての言葉だったようにも思えます。
そして、今回の『シンエヴァ』でもループ説を裏付けるような言葉を発していました。
「定められた円環の物語」という言葉が、まさしくエヴァがループ世界であったことを裏付けているような気がしますね。
また、このセリフからは渚カヲルが相当苦しんでいたことも分かります。
↑渚カヲルのセリフは「結末が分かっている物語の中で与えられた役目をひたすらこなすしかなかった」と言い換えることもできますね。
つまり、過去の世界の記憶を全て持っていたけど、大きな世界の流れに逆らえずにいた(=シンジを幸せにすることができない世界を永遠と繰り返していた)ということだったのかもしれません。
でも、最後のシーンでは、シンジは世界を望む形に再構築し、ループ世界にピリオドも打てていましたね!そう考えると、『シンエヴァ』は渚カヲルにとっても救われたエンディングだったんじゃないかと思います。
『シンエヴァ』のタイトルにも「ループ」の意味が隠されていた

ちなみに、『シンエヴァ』のタイトルにもエヴァがループ世界であることを裏付けるような意味が隠されています。
それが、タイトルの最後に付いている『:||』という記号です。
これは「リピート」という楽譜記号で、「最初に戻って反復する」という意味を持ちます。
つまり、エヴァは「世界の終わりを迎えてはまた最初に戻って繰り返す世界だった」という意味がこめられてたわけですね。
シンエヴァ視聴後の感想

シンエヴァを視聴後に思ったのが、エヴァは碇ゲンドウの物語だったのかなと。
すべてはゲンドウの願いから始まって、世界を巻き込むほどの強い願いにどう決着をつけていくのか、そして息子であるシンジとの確執にどう向き合っていくのか、全てはシンジ(=息子)目線で描かれたゲンドウの物語だったように思います。
思えば、シンジを通じて「大人」というものを考えさせられる作品でした。
TVアニメ放映時はシンジに近い年齢だった自分も、今ではすっかり大人の年齢。だけど、中身はどれだけ変わったか?正直良く分かりません。
劇中でも「エヴァの呪縛」(この呪縛に囚われたエヴァパイロットは身体の成長が止まってしまう)という言葉が出てきましたが、もしかすると視聴者も知らないうちに「エヴァの呪縛」に囚われてしまっていたのかもしれませんね。
そう思うとシンエヴァは「もうエヴァは終わらせるからさ。お前らもいい加減大人になれよ。シンジだってこんなに成長してるんだぞ」という庵野監督からのメッセージのような気がしてなりません。
シンジがエヴァを消し去って「エヴァの呪縛」から皆を解き放ったように、私たちも卒業を決意しなければならないのかもしれませんね。
「さらば、全てのエヴァンゲリオン」という言葉の意味を考えさせられました。
おまけ:シンエヴァ用語解説
最後に、おまけでシンエヴァの用語解説を紹介します。
新劇場版での設定をベースにしながら、あまりハッキリしていないところは旧シリーズの設定も交えながら解説を進めています。
他にも気になる用語や設定があれば随時解説も追加していきたいと思います!
「人類補完計画」とは?
エヴァシリーズを見るうえで切っても切り離せないのが「人類補完計画」ですね。言葉だけが一人歩きしてしまって意外と中身が知られてなかったりもするので、解説していきたいと思います。
ただ、人類補完計画を理解するにはエヴァ世界における人類史を把握しておく必要がありますので、まずはそちらの解説から。
エヴァ世界における人類史

『シンエヴァ』でも碇ゲンドウが「黒き月」を南極に運んでいましたが、この黒き月がエヴァ世界における人類史を語るうえでとても重要な概念になります。
黒き月は、第2使徒リリスの卵と考えてもらうと分かりやすいと思います。
こちらは旧作の設定になりますが、地球上にはもともと「白き月」が存在していました。白き月は第1使徒アダムの卵です。白き月から生まれたアダムは使徒を生み出し、地球は使徒による支配が行われるはずでした。
しかし、その後「黒き月」が地球に降りてきてしまい、その時の衝撃でジャイアントインパクト(後のファーストインパクト)が発生。

これにより、アダムと使徒は眠りにつき、代わりにリリスが人類を生み出したことで、地球は人(リリスの子=リリン)が繁栄した世界に書き換わってしまった…というのがエヴァ世界における人類史です。
本来、1つの惑星には1つの種のみが飛来することになっていたので、黒き月の登場は地球にとって全くのイレギュラーでした。
アダムによってもたらされた生命の実を持つ使徒と、リリスによってもたらされた知恵の実を持つ人類が相容れない存在として争っているのはこれが原因です。
使徒はイレギュラーな存在である人類を滅ぼそうとしているわけですね。
ちなみに、白き月は南極、黒き月は日本の箱根(NERV本部があった場所)に降り立っています。旧作では、人類が南極調査に向かった際「人とアダムが接触してしまったことがきっかけでセカンド・インパクトを引き起こした」と言われていました。
人類補完計画のための3つのインパクト

エヴァ世界における人類史を踏まえたうえで、改めて人類補完計画について解説してみたいと思います。
これは劇中でゲンドウも語っていたことですが、新劇場版における人類補完計画には3つのステージが用意されていました。
- セカンド・インパクト=海の浄化
- サード・インパクト=大地の浄化
- フォース・インパクト=魂の浄化
人類補完計画では、これら3つの浄化を経たのちに「ガフの扉」を開くことを目指していました。
「ガフの扉」とは?
ガフの扉とは魂が還る場所(ガフの部屋)に至るための入り口のことを指しています。このガフの部屋は聖書にも登場する概念で、エヴァの世界ではアダム由来のガフの部屋とリリス由来のガフの部屋があるとされています。
人類はリリスから生まれた存在なので、人類の魂が還るべき場所はリリス由来のガフの部屋ということになります。
つまりゼーレは人類を一旦魂の状態にし、ガフの部屋に還そうとしていたわけですね。
なぜなら、先ほど説明した通り、地球にとっての人類がイレギュラーな存在だったからです。※ゼーレ曰く「誤った進化を遂げた種」
なので、現在の人類の進化を1回リセットして、魂をあるべき場所に還した後に今度は地球にとっての正しい種として、もう1回進化をやり直しましょうというのがゼーレが目指していた人類補完計画です。

ちなみに、ゼーレが言うところの「地球にとっての正しい種として人類の進化をもう1度やり直す」ためには、アダム由来のガフの扉に還る必要があったはずです(地球にとっての正しい種というのはアダム由来の生物なので)。
だからゲンドウは『シンエヴァ』でわざわざアダムの卵がある南極に移動していたんだと思います。
ただ、リリスから生まれた人類はそのままではアダム由来のガフの扉を通ることはできません。なので、計画には器としてのアダムス(=アダムスの器)を利用していたわけですね!