エヴァ完結編『シン・エヴァンゲリオン劇場版』
今回のネタバレ記事では渚カヲルについて考察していきたいと思います。
渚カヲルはいわゆる「僕はなんでも知っている」的なキャラで、これまでのエヴァシリーズでも重要なキーパーソンとして描かれていました。
カヲルくんはエヴァの世界観を示唆するセリフが多いので、そこから考察や考えを巡らせた方も多いと思います。
また、主人公の碇シンジへの執着(愛情?)が半端じゃなく、周りから厳しく当たられがちなシンジにとって唯一の優しく甘やかしてくれるキャラといってもいいかもしれません!
これまでの展開から、カヲルくんの正体もある程度は明かされてはいましたが、エヴァシリーズにおける渚カヲルの正体という意味で、今回の新劇場版では新たな解釈が生まれたと感じています。
以下、ネタバレ全開で解説と考察をしていきます。


考察の前に…
渚カヲルについて

- エヴァMark.06、第13号機パイロット
- 新劇場版『序』で初登場
- 世界の核心を知る数少ない人物の1人
- 第1使徒(後に、第13の使徒)
カヲルくんは新劇場版『序』から登場していましたが、本格的に物語に関わり始めたのは新劇場版『破』のラストシーンからです。
初号機の覚醒によって引き起こされたサード・インパクトを止めるため、エヴァMark.06でNERV本部に現れたカヲルくん。
このセリフとともにサード・インパクトの発動を阻止しました。
シンジへの想いが伝わってきますね…!
また、性格は穏やかそのものですが、世界の核心を知る人物なのでセリフ全部が伏線という考察好きにはたまらないキャラ。ただ、話す言葉がいちいちややこしいので理解するのは難しいです。
正体は第1使徒

渚カヲルの正体は第1使徒です。
新劇場版『Q』では、フォース・インパクトのトリガーになってしまいましたが、その際にこんなセリフを言っていました。
実は、カヲルくんが第1使徒という設定はTVアニメ版から引き継いだ設定です。
もし、TVアニメ版の設定がそのまま生きているとすると、カヲルくん=第1使徒アダムの魂に人型の男性の肉体が与えられたものということになります。
しかし、新劇場版『Q』でフォース・インパクトのトリガーになってしまったカヲルくんは、DSSチョーカーの発動によって命を落としてしまいます。
DSSチョーカー
エヴァが覚醒した場合の保険。エヴァ覚醒が検知された場合、DSSチョーカーが自動爆発しパイロットの命が断たれる。
新劇場版『Q』ではカヲルくんが乗るエヴァ第13号機が覚醒したため、カヲルくんの首に付いていたDSSチョーカーが発動した。
この記事で登場する人物
この記事で押さえておきたい人物がこちら。
![]() | ![]() |
![]() | ![]() |
![]() | ![]() |
渚カヲル

世界の核心を知る存在。
常に「碇シンジを幸せにすること」を行動原理としていて、シンジを支える存在となっています。
また、音楽が好きで新劇場版『Q』ではピアノの連弾を通じてシンジと心を通わせていきました。
しかし、『Q』の最後に命を落としてしまいます。
碇シンジ

エヴァシリーズの主人公。
シンエヴァではこれまで逃げてばかりだった自分と決別し、全てのものと向き合うことを決意。父・ゲンドウやこれまで関わってきた人たちとの対話を通じて、自分、そして他者の想いを受け止めていきます。
最終シーンでは、すべてのエヴァンゲリオンを消滅させる未来を選択。Neon Genesis(新世紀)への扉を開きました。
碇ゲンドウ

碇シンジの父親。
過去に失ってしまった妻(=碇ユイ)ともう一度会うために今回の人類補完計画を画策。物語の最終局面では、その実現のためにマイナス宇宙空間内でのアディショナル・インパクトの発動を目指していましたが、成長した息子シンジによって阻止されました。
しかし、シンジの中にユイの姿を見出したゲンドウは、「ユイともう一度会う」という願いを果たすことになります。
また、シンジとの対話シーンでは、自分もシンジと同じく他者との関わりを恐れていたこと、そんな自分をユイが救ってくれたこと、ユイを失ったことで再び孤独になったことを明かしています。そして、そんな自分がシンジにしてあげられることは何もないと考え距離を置いてしまったことも。
最終的にはマイナス宇宙で再会したユイと一緒にシンジをNeon Genesis(新世紀)へと見送りました。
加持リョウジ

NERVの首席監察官。
新劇場版『破』において碇ゲンドウの部下として陰で暗躍していた人物です。
詳細は語られていませんが、新劇場版『破』~『Q』の間にある空白の14年間に命を落としました。
劇中の描写からサード・インパクトの発生を阻止するために何らかの形でエヴァMark.06のコアに取り込まれたのではと思われます。
綾波レイ

エヴァ零号機のパイロット。
その正体はシンジの母親(=碇ユイ)の遺伝子情報を元に複製されたクローン「綾波シリーズ」の一人です。
そのため、最初は無口で感情表現がほとんどない少女でしたが、碇シンジと接するうちに感情を表に出すように。また、碇シンジに対して好意を抱いている描写もありました。
新劇場版『破』ではエヴァ初号機のコアに取り込まれ、世界から姿を消しています。
碇ユイ

碇シンジの母親。
エヴァの開発にも携わっていた人物で、エヴァシリーズの開発実験中に自らその被検体となった結果、初号機に取り込まれ世界から姿を消しています。
最終シーンではマイナス宇宙にその姿を現し、ゲンドウとともにシンジをNeon Genesis(新世紀)へと見送りました。
渚カヲルは碇ゲンドウだった?

正体は第1使徒というカヲルくん最大の秘密が既に明かされている中、シンエヴァではさらにカヲルくんに関する新たな解釈が生まれました。
それが、渚カヲル=碇ゲンドウという解釈です!
これが名言されるシーンは劇中にはありませんが、そう感じることのできる登場人物のセリフや描写をピックアップしていきたいと思います。
カヲル=ゲンドウを匂わせる会話
まずは、渚カヲル=碇ゲンドウを思わせるセリフから。
シンエヴァの最終局面では、碇ゲンドウによってマイナス宇宙という空間が生み出されました(精神世界的なものだと思ってもらえれば大丈夫だと思います)。
このマイナス宇宙パートでは、カヲルくんが碇シンジや加持リョウジとの会話を通じて、自分の心情やこれまでの行動の真意について語るシーンが描かれています。
渚カヲルと碇シンジの会話
カヲルくんはシンジの幸せを願って行動していたけど、それはシンジが思う幸せの形ではなかったというのが明かされました。
これは、碇ゲンドウのシンジへの想いと重なります。
碇ユイを失ったことで再び孤独になってしまったゲンドウ。他者との関わりを拒絶し続けてきた自分が息子に何をしてあげれるのか。そう考えた結果、ゲンドウが出した答えがシンジと距離を置くことです。

しかし、それはシンジの望む幸せではありませんでした。シンジはゲンドウに必要として欲しかったし、認めてもらいたかった。
それはこれまでの『序』~『Q』までのシンジの想いを見て入れば痛いほど伝わってきます。
父が思う幸せの形と息子が望む幸せの形がすれ違ってしまった結果が碇親子の確執です。
カヲルくんとシンジとの会話はこれを表しているように感じます。
渚カヲルと加持リョウジの会話
今度はカヲルくんと加持リョウジの会話。
シンジとの会話でシンジの幸せを願って行動していたことを訴えるカヲルくんでしたが、「それは違う」と加持さんに指摘されてしまいました。
これもゲンドウの想いに対する指摘と合致します。
そもそもゲンドウが人類補完計画から始まる一連の行動を起こしたのは失ったユイを取り戻すためです。
しかし、さっきのカヲルくんとシンジの会話を見ると、その裏では自分ではシンジを幸せにできない=母親を取り戻すことが息子(シンジ)のためにもなると考えていたはずです。

ただ、その会話にもある通り、ゲンドウが「息子のため」と思って取った行動が「シンジが望む幸せの形」とは限りません。
加持さんのセリフは「結局は自分の幸せのための行動を息子のためと言い聞かせて正当化したかっただけなんだ」という手厳しいアドバイスだったようにも思えます。
また、加持さんがカヲルくんのことを「渚司令」と呼んでいることも見逃せませんね!
加持さんが司令と呼ぶのは劇中ではゲンドウのみでした。
このことからも加持さんのセリフはゲンドウに対して言いたかった言葉だったと考察することができます。
共通点はピアノ?

そして、カヲルくんとゲンドウには大きな共通点があります。
それが、ピアノです。
マイナス宇宙の世界でゲンドウは自分の過去やこれまでの想いをシンジに語り掛けました。その中で明かされたのがゲンドウと音楽の関係です。
他者との関わりを拒絶していたゲンドウは唯一音楽にだけ心を許していました。
移動中はカセットプレイヤーをイヤホンで聞くことで外の世界をシャットアウトしていたほどですからね。
特に、ピアノを弾いている時が心に安らぎを与えてくれていたそうです。
そして、ピアノはカヲルくんの代名詞でもあります。

新劇場版『Q』では、ピアノの連弾を通じてシンジと心の距離を埋めていきました。
もしかすると『Q』のこのシーンが碇親子のあり得たはずの姿だったのかもしれませんね。
シンジとゲンドウは似た者同士?
ゲンドウはカセットテープを聞くことで自分を外の世界から隔離していたと語っていました。
これは『序』~『Q』で碇シンジもよくやっていましたね。他者と関わるのが怖くて自分の殻に閉じこもっていました。
つまり、碇親子は似た者同士だったんです。
だからこそ、先ほどのシンジとの会話で、カヲルくんは「僕も君と同じなんだ」と言っていたのかもしれません。
渚カヲルは碇ゲンドウの父性?

これまでのことを踏まえると、やはりカヲルくんとゲンドウには強い関係性があるように感じます。ただ、この2人が完全なる同一人物ということは考えずらいです。
新劇場版『Q』ではゲンドウがNERVの司令官、カヲルくんがNERVのパイロットとしてそれぞれ別人として登場していましたからね。
なので、考えられるとすると渚カヲル=碇ゲンドウの父性を投影した存在かなと思います。
先ほども解説した通り、ゲンドウは歪んだ形ではあったもののシンジに対して幸せになって欲しいという気持ちを抱いていました。
一方で、自分ではシンジを幸せにできないと悩んでもいます(結果、シンジと距離をおくことに)。
シンジはそんなゲンドウの想いを知る術がありませんでしたから、父親へのコンプレックスを抱きながら孤独感や疎外感を持ってしまいましたね。
そんなシンジを救ったのがカヲルくんでした。

カヲルくんの行動原理は常に「碇シンジを幸せにすること」でした。だからこそ、シンジに対しては常に優しく寄り添ってくれています。
そして、ゲンドウはシンジを幸せにしてあげられないことに対して申し訳なく思っていました。
カヲルくんはそんなゲンドウの自責の念から生まれた「シンジを幸せにしたい」という純粋な気持ちだけを投影した存在で、エヴァ世界においてゲンドウがありたかった父親としての姿だったのかもしれません。
エンディングの渚カヲルと綾波レイ

また、シンエヴァのエンディングシーンにも渚カヲル=碇ゲンドウを思わせるような描写がありました。
最後、全てのエヴァを葬ってNeon Genesis(新世紀)に到達したシンジは宇部新川駅のホームに座っています。そして、向かいのホームには綾波レイと渚カヲルがまるでカップルのように話をしている姿が。
このシーンが明らかになったとき「レイとカヲルがくっつくの!?」と話題になっていましたが、カヲル=ゲンドウと考えるとこの描写にも納得できます。
綾波レイは碇ユイの遺伝子情報をもとに作られたクローンです。そして、カヲルくんはゲンドウを投影した存在。
シンジがNeon Genesis(新世紀)に到達する前、すべてのエヴァを葬ったシーンでも、最後にユイとゲンドウが現れてシンジを見送る姿がありました。
宇部新川駅でのカヲルくんとレイの2ショットは、ゲンドウとユイの再会を暗に示した描写だったのかもしれません。
以上、渚カヲル=碇ゲンドウ説に関する考察でした!

