エヴァ完結編『シン・エヴァンゲリオン劇場版』
今回のネタバレ記事では真希波・マリ・イラストリアスについて考察していきたいと思います。
マリはTVアニメ版・旧劇場版には登場していなかった新劇場版からの新規キャラです。そのため、他の登場人物に比べると謎が多いキャラクターとして描かれていました。
これまでも何かを知っていそうな雰囲気は出ていましたが、結局何者なのかは分からずじまいな展開が続いていましたね。
そんなマリの正体が『シンエヴァ』で遂に明かされることになりました!
しかもエンディングに関わってくるような重要人物で、新劇場版におけるキーパーソンだった様子…。特に、冬月に「イスカリオテのマリア」と呼ばれていたのが気になります。
以下、ネタバレ全開で解説と考察をしていきます。


考察の前に…
真希波マリについて

- エヴァ8号機パイロット
- 新劇場版『破』で初登場
- 自称「胸の大きいイイ女」
真希波・マリ・イラストリアスはNERVユーロ支部所属のエヴァパイロットでしたが、何者かの命令で日本に密入国してきます。
行動目的やその正体は一切不明。
1970年前後の歌を口ずさんだり、語尾に「にゃっ!」を付けるのが特徴です。
TVアニメ版・旧劇場版には登場しない

マリの正体が不明な理由の一つとして、TVアニメ版・旧劇場版には登場しないということが挙げられると思います。
新劇場版で初めて登場したキャラなので、その正体や行動目的を探るための情報量が圧倒的に不足していました。
しかも、マリが本格的に物語に関わってくるのは『Q』以降。本人も自分のことはあまり多くを語らないタイプなので、情報はかなり断片的…。
ただ、唯一漫画版の特別エピソードにだけ登場しています。そして、今回明かされた正体も漫画版の設定と深く関わったものとなっていました。
この記事で登場する人物
この記事で押さえておきたい人物がこちら。
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真希波・マリ・イラストリアス

初登場は新劇場版『破』。
NERVユーロ支部所属のエヴァパイロットでしたが、NERVとは違う目的で動いていることをほのめかしていました。
新劇場版『Q』以降は所属組織をWILLEに移し、フォース・インパクト発動を計画しているNERVへの反抗勢力として活動しています。
碇ゲンドウ

碇シンジの父親。
日本のNERV本部の最高司令官で人類補完計画の推進者。その目的は「亡き妻(=碇ユイ)にもう一度会うこと」です。
新劇場版『Q』以降は人類補完計画完遂のためフォース・インパクトの発動を画策しており、元NERVの構成員とも対立状態にあります。
碇ユイ

碇シンジの母親。
エヴァの開発にも携わっていた人物です。エヴァシリーズの開発実験中に自らその被検体となった結果、初号機のコアと同化してしまい世界から姿を消しています。
冬月コウゾウ

日本のNERV本部の副司令官。
碇ゲンドウとユイとは大学時代の師と教え子の関係です。
ゲンドウの目的を知るただ一人の人物で、彼の唯一と言っていいほどの理解者。最後までNERVに所属し続け、ゲンドウの目的遂行を陰で支えました。
碇シンジ

エヴァシリーズの主人公。
物語終盤ではこれまで逃げてばかりだった自分と決別し、父・ゲンドウやこれまで関わってきたすべての人たちと向き合うことを決意します。
対話を通じて自分の成長をゲンドウに示したシンジは、ゲンドウの計画を阻止することに成功。最終的にすべてのエヴァンゲリオンを消滅させる未来を選択し、Neon Genesis(新世紀)への扉を開いたことで世界を再構築しました。
綾波レイ

エヴァ零号機パイロット。
無口で感情表現がほとんどない少女でしたが、碇シンジと接するうちに感情を表に出すように。また、碇シンジに対して好意を抱いている描写もありました。
新劇場版『破』で使徒に敗北。その後、エヴァ初号機のコアに取り込まれたことで世界から姿を消しています。
式波・アスカ・ラングレー

エヴァ2号機パイロット。
新劇場版『破』で初登場後、NERVのエヴァパイロットとして碇シンジや綾波レイと行動を共にします。特に、シンジに対しては恋愛感情を思わせる様子も。
新劇場版『Q』以降は所属組織をWILLEに移し、フォース・インパクト発動を計画しているNERVへの反抗勢力として活動しています。
渚カヲル

その正体は第1使徒。
常に「碇シンジを幸せにする」ことを第一の目的としており、周りから疎外感を感じていたシンジにとって心の支えとなる存在。
しかし、新劇場版『Q』ではシンジとともにエヴァ第13号機に搭乗し世界の救済を試みましたが、ゲンドウの策略により逆にフォース・インパクトのトリガーとなってしまいました。
その後、エヴァ覚醒を食い止める装置「DSSチョーカー」が発動したことによってカヲルは命を落としています。
真希波マリの正体が判明!
新劇場版『破』で登場して以降、何か重要な秘密を知っていそうな雰囲気を醸し出していた真希波・マリ・イラストリアス。
これまで謎に包まれていた彼女の正体が、遂にシンエヴァで明らかになりました!
碇ゲンドウとユイの同級生

マリの正体は碇ゲンドウと碇ユイの大学の同級生です。つまり、碇シンジの親の世代ということになります。
ただ、一部の人にとってはこの設定も「やっぱりね」という感想だと思います。
その理由が漫画版のエヴァ!

漫画版はTVアニメ版のストーリーを基に貞本義行さんが執筆されている作品です。貞本先生はエヴァシリーズのキャラクターデザインを務めている方ですね!
この漫画版最終巻(14巻)に収録されている『夏色のエデン』では、ゲンドウとユイの大学時代が描かれています。
この作品の中で二人が通う大学に飛び級入学してきたエリート学生がマリでした。
漫画版を知っていた人にとっては、シンエヴァでようやく漫画版と劇場版がつながったという感想かと思います。
真希波マリの年齢は?
ちなみに、マリはゲンドウたちの大学の同級生ですが、年齢はそこまで高くないはずです。TVアニメ版と漫画版の設定を組み合わせるとこんな感じになります。
『序』『破』 | 『Q』『シン』 | |
![]() | 33歳 | 47歳 |
![]() | 48歳 | 62歳 |
![]() | 38歳 | 52歳 |
![]() | 14歳 | 28歳 |
碇ユイはもし生きていたらの年齢です。
真希波マリが若いままなのはなぜ?
また、マリは見た目が若いままですよね。漫画版のマリが16歳。見た目的には当時とそんなに変わらない気がします。
これは恐らく、新劇場版『Q』でアスカが言っていた「エヴァの呪縛」によるものかと思われます。
新劇場版『破』→『Q』の間に14年が経過していましたが、シンジをはじめとするエヴァパイロットは見た目が変化していません。アスカ曰くこれが「エヴァの呪縛」です。
マリも『破』の時から見た目に全く変化がありませんでしたからね。
ただ、そう考えるとマリは『序』の17年前から既にエヴァの呪縛に囚われていたことになりますが、当時はまだエヴァが開発されていないはず。
新劇場版『破』で仮設5号機に搭乗した時も、これが初めてのエヴァとのシンクロだったことがうかがえます。
マリがいつ・どうやってエヴァの呪縛に捉われたのか、それはまだ謎のままです。
真希波マリ=イスカリオテのマリア?

マリ・ゲンドウ・ユイの3人は、大学時代に冬月コウゾウの研究室に所属していました。シンエヴァでは、師弟関係である真希波マリと冬月の邂逅シーンも見どころの一つです。
そんな2人の会話シーンですが、一つ気になるセリフがありました。
冬月はマリのことを「イスカリオテのマリア」と呼んでいました。急に出てきた言葉なので混乱した方も多いのではないでしょうか?
ただ、このイスカリオテのマリアという言葉。じっくり考察してみると、真希波・マリ・イラストリアスの物語上の立ち位置が見えてきました。
以下、詳しく解説していきます。
イスカリオテのマリアとは?
元ネタは裏切り者のユダ

元ネタは聖書における裏切り者のユダです。
あまり知られていませんが、イエス=キリストを裏切ったとされるユダの正式名称がイスカリオテのユダと言います。
ユダはイエスの12人の弟子のひとりで、いわゆる使徒と呼ばれる存在ですね。
エヴァの世界観はキリスト教の概念がたくさん出てきますので、元ネタとしてユダが使われることに全く違和感はありません。
ただ、なぜマリはイスカリオテと呼ばれていたのでしょうか?
真希波マリはユダだった?
元ネタがイスカリオテのユダだとするとマリ=ユダという構図が成り立ちます。そこで、マリとユダの共通点を探ってみたいと思います。
共通点①:裏切り者?

まず最初に思い浮かぶのがゲンドウと冬月にとっての「裏切り者」という意味です。
先ほども解説しましたが、真希波マリはゲンドウの同級生で冬月の教え子でした。
新劇場版『破』まではNERVのエヴァパイロットとして活動していますし、ゲンドウたちとの関係性を考えても「人類補完計画」に深く関わっていた可能性があります。
そんなマリが『Q』以降は反NERV組織であるWILLEに所属。ゲンドウたちと対立する立場を取っていましたので、裏切り者と揶揄されるのも違和感ありませんね。
共通点②:真理を授かった存在?

そしてもう一つが「真理を授かった存在」という意味です。
ユダは金貨と引き換えにイエスを裏切った存在として有名ですが、実はユダこそが真理を授かった存在(=イエスに近い存在)だったという説が最近の研究で主張されるようになってきています。
その根拠となっているのが『ユダの福音書』という外典です。外典にはユダの裏切りそのものがイエスの指示だったということが示されていました。
その記述によれば、イエスを裏切ったイスカリオテのユダが実はイエス・キリストの弟子の中の誰よりも真理を授かっており、「裏切り」自体もイエス・キリスト自身がユダへ指示したものであるとしている。
引用元:wikipedia
しかも、この外典の内容が発表されたのは2006年。
新劇場版『序』公開の前年だったというのも偶然じゃなさそうですね。
そして、もしかすると「真理」という言葉が「マリ」と読めるのも偶然じゃないかもしれません!
ユダとの比較で見えてくる真希波マリの正体と目的

ユダとの比較から見えてきたマリの人物像は「裏切者に見えるけど実は最も真理を理解している存在」でした。
ここからマリの隠れた目的が見えてくる気がします。
裏切り者というのは、やはりゲンドウや冬月と対立する立場を取っていることだと考えられますが、問題は「真理とは何か」です。
これは、マリ・ゲンドウ・冬月の共通点を考えれば自然と答えは絞られると思います。そう、3人の共通点は「碇ユイ」ですね!
実はこの3人ともが碇ユイに好意を抱いていたことが過去のエヴァシリーズで明かされています。ゲンドウは言わずもがな、冬月は旧劇場版、そして、マリは漫画版で告白までしていました!
結構ガチの告白です。
これらを踏まえて、改めてマリの人物像を考えてみると、
- 本来であればゲンドウや冬月と気持ちは同じ(=ユイと再会したい)はずが、対立する(=ユイの復活を阻止する)立場に立っている
- でも、それは真理(=ユイの本当の願い?気持ち?)を理解しているから
という構図が成り立つのかなと。
碇ユイの本当の願いとは?
碇ユイは人類を使徒から守るためエヴァの開発にも関わっていました。そんなユイの願いについては旧劇場版や漫画版で明確に描かれています。
これはエヴァの開発実験の際に交わされたユイと冬月との会話です。ユイは「人類の未来のため」そして「シンジのため」にエヴァに乗ると語っています。
この後の実験でユイは初号機のコアと同化し、世界から姿を消してしまいました。
こちらは漫画版(サード・インパクト時)におけるゲンドウとユイとの会話。「あの子」というのはもちろんシンジのことです。
ユイが初号機のコアに取り込まれてしまったのは不幸な事故と考えられていましたが、「自分からエヴァに残ると決めた」ことが本人の口から語られました。
ユイはシンジを守るために進んでエヴァと同化していたんですね。
こういったユイの言葉からも分かる通り、
- ユイはシンジを守りたかった
- そして、人類の未来をシンジに守ってもらいたかった
ということが分かります。
真希波マリの目的は碇ユイの願いを叶えること?

対してゲンドウと冬月の目的はユイとの再会を果たすことです。そして、そのために人類を巻き込んだ計画(=人類補完計画:地上の生命を浄化し、すべての魂を一つにしようとしている)を実行しようとしています。
改めて、碇ユイの願いとゲンドウたちがやろうとしていることを比較してみると、真っ向から対立していることが分かりますね。
だからこそ、マリはゲンドウたちと対立する(=ユイの願いを尊重する)道を選んだ可能性が高いです。このことから、マリの目的は「碇ユイの願いを叶えること」であると分かります。
実際、マリは初登場シーンでも自分がNERVとは違う目的で動いていることを匂わせていました。
これは、ユイの願いを叶えるためにエヴァのパイロットとなる必要があった、そのためにNERV(もしくはゼーレ)を利用してその地位をつかんだ、そんなマリの状況を言葉にしたセリフと捉えることもできるかなと。
つまり、イスカリオテのユダとの比較でみたマリの正体とは「碇ユイの願いを叶えるために、碇ユイの復活を望む者と対立した裏切り者」と考えることができます。
マリアに込められた意味は?

ちなみに、冬月は真希波マリのことをイスカリオテの「マリア」と呼びました。マリではなくわざわざマリア呼びした理由についても考えてみたいと思います。
キリスト教におけるマリアには主に2つの意味があります。
- 聖母マリア=イエスの母
- マグダラのマリア=イエスの妻
イエスというのは聖書における救世主のことです。そして、エヴァにおける救世主とは主人公の碇シンジを指しています。
シンジの名前の由来も神の子(神児=シンジ)ですからね!
つまり、エヴァにおけるマリアとは、碇シンジにとっての「母親」または「妻」という意味を持つことになります。
真希波マリの母親的側面
もちろんシンジの母親は碇ユイですが、物語の中でマリがシンジの母親的役割を担っていたシーンもあったように思います。
新劇場版『破』においてエヴァのパイロットを降りた碇シンジ。そんなシンジがマリの行動のおかげで再びエヴァに乗る決意をします。
この直後、綾波レイの乗るエヴァ零号機を捕食しNERV本部に迫る使徒を目の当たりにして、シンジは再びエヴァに乗る決意を固めました。
このシンジが再起するきっかけを作ったのがマリです。シンジの気持ちを否定せず受け止めたうえで、そっと立ち直るきっかけを作ってあげていました。
また、『Q』においてはシンジを叱咤するシーンも。
再びフォース・インパクトのトリガーになってしまったシンジでしたが、心の支えだった渚カヲルを失ったことでその場(エヴァ第13号機の中)から動けなくなってしまいました。
この時、シンジを第13号機から引っこ抜き、フォースの発動を食い止めたのがマリです。
今度は『破』のときとは違い少し強めな口調です。
アスカにも「ガキシンジ」と言われるほどいつまでも変わらないシンジに対して、厳しい言葉ながら成長を促しているセリフですね。
真希波マリの妻的側面
そして、今回の『シンエヴァ』において描かれたのがマリの妻的側面だと感じています。
クライマックスでは、成長したシンジが父・ゲンドウと向き合うことを決意。そんなシンジに対するマリの態度がこれまでとは明らかに変わっていました。
この「ワンコ」呼びもエンディングに近づくにつれて「シンジ」と名前呼びに変化していたことも見逃せません。
実はシンジが立ち直る前、アスカには「あいつに必要なのは母親」と言われていました。しかし、シンジが父親と向き合うことを決意したことで、ある種の「親離れ」が実現したことになります。
マリのシンジへの態度が明確に変わったのはこのタイミングです。
つまり、シンジが成長したことで母親としての役割が必要なくなり、次の役割(=妻としての役割)に移行したのかなと。
そして、これがエンディングへの伏線になっていましたね。
イスカリオテのマリアとマリエンド

『シンエヴァ』のエンディングは、再構築された新世界(=エヴァの存在しない世界)で、心も体も成長したシンジがマリと手をつないで駅から駆け出していくというものでした。
いわゆるマリエンドというやつですね。
レイでもアスカでもなく、新劇場版から登場したマリがヒロインポジションを持っていくという結末に驚いた方も多いと思います。
ですが、先ほどのイスカリオテのマリアの意味を考えると、今回の結末は必然だったように思えてきます。

新劇場版におけるイスカリオテ(=ユダ)としてのマリの目的はユイの願いを叶えることでした。そして、ユイの願いは「シンジを守ること」と「シンジが人類の未来を守ってくれること」です。
また、新劇場版におけるマリアとしてのマリの役割はシンジの母親であり、妻です。
そう考えると、『シンエヴァ』のエンディングはマリに与えられた2つの役割を見事に昇華した終わり方だったのかなと感じますね!
ただ、マリの「母親」→「妻」への役割のシフトが少し見えずらかった部分はあったかなとも思います。
この辺りはパンフレットをよくよく読んでみると「庵野監督は『シンエヴァ』までマリを他の監督に任せて自分は関わらないようにしていた」とあるので、このことが少し影響しているのかもしれませんね。
以上、シンエヴァにおける真希波・マリ・イラストリアスについての考察でした!

